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第79話

弥生が奈々の立場に立たなくても、その気持ちは理解できたが、受け入れることができないのが当然だろう。

だが、弥生は奈々ではなく、自分自身の立場から起こったことを考えるしかなかった。

「残念だけど、そんなに偉い人間ではないし、奉仕精神もない。子供は私の体の中にいる。産むか、堕ろすか、それはすべて私の自由だ。私以外に誰も、私の子供の生死を決めることはできない」

「あなた……」

「恩を返したいなら、他のことでも私に手伝えることがあれば、言ってください。でも、この件だけは絶対に無理」

彼女の赤ちゃんは彼女にとって大切な家族であり、自分でさえ堕ろすことができないのに、他人がその生死を決めることなど許されるはずがない。

「私が頼んだことを、あなたは従うの?」

「そう。ただし、常識の範囲内で」

恩を返すのは当然だが、もし彼女の要求があまりにも理不尽であれば、それは考え直す必要がある。

奈々は思案にふけった。

実際、彼女がこの話を持ちかける前から、弥生が簡単に同意することはないだろうと予想していた。

瑛介は宮崎家の当主である。

彼の資産や人柄など様々な条件が完璧だ。

奈々の目から見れば、世界中で瑛介に匹敵する男はほとんどいない。

こんな男性を誰が手放すだろうか?誰が手に入れたら、手放すことはできるだろう?

そして、弥生はどうだろう?彼女の家族は破産しており、彼女が瑛介を命綱として頼っている。もし、本当に瑛介の妻になれば、彼女は一気に上がることができる。

もし放棄する気があったら、彼女は妊娠などしなかっただろう。

今、この子供は彼女にとって、瑛介を繋ぎ止めるための切り札かもしれないが、奈々がそんな切り札を残しておくことができない。そうでなければ、彼らが離婚するかどうかも怪しくなる。

だが、彼女が自ら堕胎を拒否している以上、奈々は他の方法を考えなければならなかった。

今、最も重要なのは、弥生を落ち着かせることだった。

そう考えた奈々は微笑み、優しい声で言った。

「そうね、子供を堕ろすなんて残酷すぎるわ。聞くだけでも心が痛む。だからこうしよう、私たちで一つの協定を結ぶ」

「何を?」

その言葉が終わると同時に、西田がホットミルクを持ってきた。

「どうぞ」

奈々はタイミングよく言葉を止め、西田に向かって甘い笑顔を見せた。

「西田くん、ありがと
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